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名古屋大学では、創造的な研究活動によって真理を探究し、世界屈指の知的成果を産み出すこと、そして、自発性を重視する教育の実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育てることをそれぞれ研究と教育の基本目標としています。この研究・教育の目標に向かって、2017年4月の改組に伴い、名古屋大学大学院工学研究科にわれわれの所属する「機械システム工学専攻」は誕生しました。教職員一同、気分を新たに、研究と教育業務に専心努力する所存でおります。
さて、上記の基本目標は、機械システム工学専攻の活動、すなわち、機械システムの多様化・高機能化・知能化および機械工学分野の細分化・専門化に対応しつつ、これらを統合して新しい機械やシステムをまとめ上げる知的な活動を通じて達成されるものである、とわれわれは考えています。加えて、本専攻における教育を通じ、豊かな人間性と高い倫理観をもった人材を育成しようと考えています。
しかし社会に目を転ずると、近年のIoT×AIによる技術革新や今後の第5世代移動通信システムの導入の先に、いまだかつてないスピードと規模で変革がもたらされようとしていることを、われわれは容易に想像することができます。探求すべき真理は、先端的な科学技術の先に見えるものに違いありません。これに対し、人材の育成はいつの時代も基礎教育に根ざして積み上げるべきものであり、多大に時間を要するものであるに違いありません。では、両者のギャップをいかに克服して研究教育を実践すべきか?
われわれは、これを常に自ら問うことによって、また、さらに細分化された自らが専門と考える研究教育の分野に軸足を置きつつも、広く関連する分野の科学技術を率先して取り込むフットワークの良さを兼ね添えることによって、これまで述べてきた研究と教育に関する活動が、それら自体相乗効果をもたらすものになると信じ、研鑽を重ねています。たとえば、この社会的変革のただ中で創出されつつある技術の一端を利用して、教育の要となる工学系基礎あるいは専門科目の教育を実践していくような試みが考えられます。あるいは、多様なふるまいを呈する生物の動きの中に共通する学理を見出し、環境負荷の低減につながる多機能機械システムを創造するような研究に結実するかもしれません。以上のように、機械システム工学専攻のメンバーは、自ら研鑽を積みながら、学理に根ざし新たな価値を創造できる人材の育成と、社会の要請や期待に応える研究の完遂に邁進します。
Prof. Yoji Yamada, Chairperson of Department